SFTSとは

Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome

SFTSは、マダニにより媒介されるSFTSウイルスによる感染症で、主にSFTSウイルスを保有するマダニに刺されることで感染します。 SFTSを発症している動物との接触により感染することもあり、動物由来であること、 致死率が高いこと、重症例では出血症状が認められること、発症動物、感染した人の血液・体液に接触した者が感染するなどの特徴があります。

感染経路を理解して危機意識を高めておくことが大切

【マダニからの感染】

マダニが吸血時に,動物やヒトへSFTSウイルスを伝播します

マダニの予防薬で100%防げるわけではありませんが、感染の要因であるマダニを付けないことで感染経路の1つを断つことが重要です。そのため通年予防をおススメしています

【動物からの感染】

SFTSを発症した動物にペットが咬まれることでも感染します

人への感染に至っても、STFSを発症したイヌの飼い主が感染したこと、発熱衰弱を認めたネコに咬まれた後に感染して死亡した飼い主さんも報告されています

ペットが発症した場合、唾液を含む体液中に大量のウイルスを排出するため、ヒトへの感染リスクは今ままで考えられていた以上に高い可能性があります

直接マダニから感染するのではなく、血液、尿、唾液などの体液との直接接触が感染経路の一つであることは十分に注意する必要があります

特に外に遊びに出るネコちゃんは注意が必要です。マダニ予防をしていても、屋外で既に感染している動物と接触することで感染する可能性があります。ネコちゃんを外に出さないようにすることで動物からの感染経路を断つことが可能です。

このような症状が見られる場合にSFTSウイルスを疑う

イヌの症状

  • 発熱
  • 元気消失
  • 食欲不振
  • 白血球減少、血小板減少などの血液検査所見
  • 場合によっては嘔吐、下痢、黄疸

イヌの致死率はネコより低いとされていますが、40%とかなり高いです

【ネコの症状

  • 発熱
  • 元気消失
  • 食欲不振
  • 嘔吐
  • 下痢
  • 黄疸
  • 白血球減少、血小板減少などの血液検査所見

ネコの致死率は、60~70% と、発症した場合ほぼ死んでしまう可能性が高い恐ろしいウイルスです

また、ヒトに感染した場合も、最大30%が死に至る可能性があります

参照資料:国際感染センター 『重症熱性血小板減少症候群(SFTS)診療の手引き 2024年版』

SFTSは2011年に世界で初めてその存在を報告されてから、日本では主に西日本のみで感染が拡大していました。しかし2025年5月に初めて関東でのペットの感染が確認され、三重県の獣医師が感染したネコの治療により亡くなるといった事案がニュースでも報道され、関東の獣医療従事者は皆、戦々恐々としているのではないでしょうか。獣医療従事者だけでなく、飼い主さんに至ってはSFTSウイルスの怖さをもっと知っておく必要があると思います。

SFTSウイルスは人獣共通感染症でペットもヒトも亡くなるウイルスです。多くの人が、マダニからの感染のみと勘違いされていますが、感染した動物やヒトの体液(血液、尿、唾液など)から感染する可能性があることに注意する必要があります。2つの感染ルートであるマダニからの感染と感染した動物の体液や血液からの感染、この2つの経路を断つことが予防する上で重要となります。マダニからの感染は予防薬を毎月投与することで予防することが可能です。そしてもう1つは、ネコちゃんであれば外に出さないことで予防出来ます。

動物病院では、感染が疑われる症状のあるワンちゃん、ネコちゃんの検査をする際は、人間の病院がコロナウイルスの検査をしたような防護服、ゴーグル、手袋といった完全防備で検温・採血を実施する必要があります。採血した検体は厳重な袋に入れてPCR検査センターに送ります。

大袈裟でなく命がけです。

2つの感染ルートの1つでも可能性をなくしておくことで動物病院側での対応が大きく異なり、そのため飼い主サンにはマダニ予防の徹底をお願いしています。ウイルスに限っては、心配し過ぎるくらいで丁度いいのではないかと思います。

正しい知識を持って、家族の一員であるワンちゃん、ネコちゃんと長く楽しい生活を送れるように気を付けてください。